laoshuaidamiのブログ

2011年2月から2016年5月までの北京生活と辺境を含む中国全土および周辺国への珍旅行の記録です。

2011年6月10日

中国の物価高騰と価格抑制政策について


 現在、野菜価格の高騰が中国では大きな問題となっています。原因は、長江下流域での深刻な干ばつによるものです。しかし、これはここ3週間程度前から急に起こった現象で、その前の5月上旬頃までは逆に野菜の暴落が深刻な問題となっていました。更にその前の3月までは、やはり干ばつの影響で野菜の高騰が問題視されていたというような状況です。
 野菜の価格は、ここ数年の天候不順の影響で乱高下を繰り返していますが、総体的には上昇傾向にあります。野菜の価格動向がこれほどまで注視される要因は、現在中国で一番の問題となってインフレ・物価高騰に大きく影響するからです。
 中国の消費者物価指数(CPI)は、昨年2010年においては、平均で前年比3.3%上昇しています。特に、11月には5.1%と過去28ヶ月で最高の水準となりました。今年には入ってからは、1月4.9%、2月4.9%、3月5.4%、4月5.3%と、4ヶ月平均で5.1%の上昇となっています。更に5月は前述の野菜価格の高騰の影響により、4月を上回ると予想されています。
今年の全人代で掲げられた目標は4%ですから、年初から目標を大きくオーバーした状況が続いている訳です。
 これに対し政府・人民銀行は、昨年10月以降、預金準備率を8回、政策金利を4回引き上げ、インフレ抑制に取り組んでいます。
 あわせて、政府・国務院は2010年11月19日に「消費価格水準の安定と大衆の基本的生活の保障に関する通達」を発出し、物価の安定に乗り出しました。
 この通達の内容は、別添(訳文)のとおりですが、具体的な内容については言及されていません。具体的な内容は、各省市政府および関連部門(国営企業等)が作成し、国務院に報告することとなっています。聞いた話によれば、一定期間ごとに見直し・継続の有無を検討する時期があり、本年3月および6月において見直しを図る予定でしたが、現時点では政策解除には至っていないとのことです。
 それでは、政策が確実に実行されているかどうかですが、5月9日の新聞報道によると、「日用品メーカー大手のユニリーバが、3月下旬にマスコミ通じて同社の商品を値上げする意向を複数回流し、消費者の買い占め行動を意図的に誘導したとして、上海市物価局は200万元の罰金を同社に命じた。」とあります。
 しかしながら、5月30日の新聞報道によると、「ユニリーバは、処罰直後に値上げを決行し、これについては政府は容認の構え。業界内外からは、『本政策に対する反発の姿勢の表れ』と支持意見が相次いでいる。」とのことです。
 穀物油糧情報でもお伝えしていますが、大豆油の価格抑制により、搾油メーカーは悲鳴を上げている状況です。
 人民の生活を優先する立場からの政策は十分理解できますが、企業とっては非常に苦しい内容のようです。

2011年5月13日

中国の自動車メーカーについて

こちらに出張されて来られる方が一番多く目にし、多く質問されるのが当地で走っている車のことです。
 確かに私も最初に中国を訪れた際、日本の車を始めドイツ車、アメリカ車など、いわゆる外車が多く走っていることに驚き、何故にこんなにお金持ちがたくさんいるのだろうと疑問に思ったものです。
 しかし、中国で走っている車のほとんどは国産車です。中国での輸入車の割合は数パーセントに過ぎませんが、外国ブランドの車は70%を超えるとも言われています。つまり、外国ブランドの国産車が多く走っているということです。
これらの車は、外国企業が中国企業と合弁会社を設立し、そこで自社のブランドを付けて生産したものです。
何故かというと、中国の自動車産業はWTO加盟後も法律(外商投資方向の指導規定)により、外資の50%以上の出資が認められていません。このため、外国企業は中国企業と合弁で組まざるを得ないからなのです。
中国の自動車メーカーは現在100社以上あると言われていますが、そのなかでの大手は3社ないし4社と言われています。またそれ以外でも外資と合弁している主なメーカーは以下のとおりです(なお、経済の急速な発展により情勢がめまぐるしく変化しているため、本内容は変わることがあり得ます。)

中国メーカー 本社所在地 主な合弁先外資(カッコ内は合弁企業名)
第一汽車 大手 吉林省長春 VW(一汽大衆)、トヨタ・ダイハツ(一汽豊田)
上海汽車 大手 上海市 VW(上海大衆)、GM(上海通用)
東風汽車 大手 湖北省武漢 日産(東風日産)、ホンダ(東風本多)プジョー・シトロエン(東風雪鉄竜)
長安汽車 大手 重慶市 スズキ(長安鈴木)フォード(長安福特)
奇瑞汽車 大手~準大手 安徽省蕪湖市 無し
北京汽車 準大手 北京市 現代(北京現代)
広州汽車 準大手 広東省広州市 本田(広汽本田)トヨタ(広汽豊田)
 
トピックとしては以下のようなものがあります。
  ○ 北京のタクシーは、現在8~9割程度が「北京現代」、「一汽大衆」が少し、「東風雪鉄竜」をたまに見かけるという具合です。
  ○ 上海のタクシーは圧倒的に上海大衆のサンタナを多く見かけます。VWは、1984年に欧州の自動車メーカーとして初めて中国に進出し、中国側にも深く受け入れられています。
    中国では、「水を飲む人は井戸を掘った人の恩を忘れない。(喝水不忘挖井人)」ということが現代でもあるようです。
○ 広州本田はホンダの中国での生産の一大拠点となっていますが、昨年、部品工場で大規模なストライキが行っています。


 今度中国に来られた際には、後ろトランク上部のメーカー名の表示をよく観察されると、また新たな発見があるかもしれません。

2011年4月19日

<東日本大震災に対する中国での報道等について>

東日本大震災で被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復興を心からお祈り申し上げます。


 今回の巨大地震に対する中国での報道は、迅速かつ正確なものでした。
 人民日報のインターネット報道では、地震発生の約15分後の15時03分(中国時間14時03分)には、「日本近海发生8.4级地震 首都东京震感强烈(日本近海でマグニチュード8.4の地震が発生。首都東京で強い揺れを感じた。)」と第一報を報じ、その6分後の15時09分には、「気象庁が津波警報を発令した」ことを報じています。その後の1時間の間だけでも、「」巨大津波が発生したこと」「福島第1第2原発が自動停止したこと」「火災が発生していること」など3~5分間隔で、マグニチュードの訂正発表を含め報道が更新されていました。
 また、CCTV(中国中央電視台)では、地震発生直後から、13チャンネル(CCTV新聞)でNHKワールドの同時通訳放送を開始し、ほぼ3月一杯続いていました。
 余談ですが、3月26日に小職の出身大学の在北京の同窓会があり、日本に留学し現在中国の国営ラジオ放送で仕事をしている中国人の方の話しでは、「彼女を含む日本語の同時通訳者は、震災直後からCCTVに動員され、今もなお缶詰状態となっている。同じ時期にリビア空爆で動員されたアラビア語の同時通訳者は一晩で家に帰った。」とのことです。
 原発関連では、特別番組で中国の識者を招き、事故の詳細な内容を、原発の構造を含めて解説し、事実を正確に伝えようとしている努力が見られました。(逆に「日本を擁護しすぎだ」という意見もあったほどです。)
 またその他、地震に対する日本人の冷静な対応、地震報道に対する日本のメディアのクオリティーの高さ、などを報じています。
 一つ残念なこと言えば、3月17日頃から発生した塩パニックです。
塩パニックの原因の一つは、日本の原発事故により海水が汚染されるので今後製造された食塩は全部汚染食塩となる、というもの。もう一つは食塩に含まれるヨウ素に被爆予防効果がある、という噂から、人々がスーパー、商店に塩を買いに走り、棚から塩が無くなったり、値段が十倍ほどにもなったことです。しかしそれも、マスコミを通じた政府の呼びかけにより1週間程度で沈静化し、現在では商品も棚に戻り、値段も元の水準に戻っています。
このように、事実をできるだけ正確に伝えようと努め、憶測や思い込みで報道された内容は、小職の知る範囲では一切ありません(小職の中国語能力の低さも一つの原因ではありますが)。
主観で申し訳ありませんが、3年前のいわゆる「ギョーザ事件」がどのように報道されたかが思い起こされます。小職は当時も北京に駐在しており、久しぶりに一時帰国した折、電車の吊広告を見て唖然としたことを今でも思い起こされます。この3年間で、それだけ日中間の関係が成熟した思えば、非常に喜ばしいこととも考えます。
もう1つ主観で申し訳ありませんが、今重要なのは、「日本人が、傷付き・困難に直面した同胞に対し、どう接しているか」ということを、政府・民間を問わず、もっと世界にアピールすることと考えます。
皆様日夜寝食を忘れ必死にご尽力いただいておられますが、国外に居て日本を見ている日本人としては、世界がそのことに注目していることをどうしても強く感じてしまいます。私を含め日本人は、このようなことはどうしても偽善っぽくて抵抗を感じてしまいますが、「見えなければ無いもの」として感じるのがどうも世界標準のようです。


皆様が大変な状況下で、主観を含め幾分遠い視点でコメントしてしまったことをお許し下さい。深くお詫び申し上げます。
繰り返しになりますが、被災者の方へのお見舞申し上げるとともに、亡くなられた方のご冥福、一日も早い復興を、13億の民とともに心から祈念申し上げます。