laoshuaidamiのブログ

2011年2月から2016年5月までの北京生活と辺境を含む中国全土および周辺国への珍旅行の記録です。

2012年8月8日

北京の大雨について

日本でも報道されていますが、先月21日北京は、市の気象観測記録がある1951 年以降、61年間で最大の豪雨となり、市内で77人(7月末時点)が死亡しました。
 基本的に北京は乾燥地帯で、年間降雨量は400mm程度、東京の約1500㎜に比べると、その3割にも満たない状況です。
雨が降ることはあるにはありますが、長時間降ることは少なく、おおよそ1時間、長くても2時間程度で、少し待つと止むので傘を使用することは年間数日程度しかありません。
しかし、温暖化の影響なのか、今年の夏は例年に比べると雨の日が多く傘が手放せない状況で、また振り返ってみれば今年の冬も雪の日が多かったような気がします。
 
7月21日の豪雨のいつもとの違いは、その時間の長さでした。午前中から小雨がパラつき始め、午後2時過ぎる頃から豪雨に変わりました。そして、その豪雨が多少の強弱はあるものの夜の8時頃まで6時間程度連続で続いています。(北京市は広いので、地域によってその差があるため、私の感じた範囲を述べています。)
北京での豪雨は決して珍しいことではなく、激しい雨と雷、そしてあたりは夜のように真っ暗の状態になります(日本の報道では珍しいことのように書かれていましたが日常茶飯事です)。
しかし、これはあくまでも短時間で、そしてこの短時間の雨にも関わらず、街中いたるところで冠水します。特に道路が立体交差し、一方が低くなってところなどは5分もしない内に確実と言ってよいほど冠水します。
今回の豪雨による死者の多くもこの冠水による溺死でした。つまり、北京は、雨に弱い街、雨に慣れていない都市であるということが言えます。

もともと乾燥地帯であることから、降雨による排水対策にコストと手間ひまを掛けるという発想に立てないことは一定理解できますが、その他にも以下のような要因があるようです。
1.中国は1953~57年にかけ、ロシア(旧ソ連)モデルを導入し、都市建設を行い、下水道建設もロシアモデルをもとに行われたが、そもそもロシアの都市は寒冷地域で雨があまり降らない。
2.歴史の古い都市であることから、過去の排水施設を今現在も一部使用しているが(明代のものあると聞く)、近年の急速な発展により、その上にビル等が建設され、大がかりな改修等が困難。

 なお、このような現状を市政府幹部も十分認識しており、北京市トップの郭金竜共産党委員会書記はテレビの取材に対し、都市部の立体交差など多数の場所で激しい浸水があったことについて「われわれのインフラの脆弱性が表れた」と述べ、大雨に弱い北京の都市構造の問題点を指摘しています。

 なお、7月21日当日、私はたまたま外出し、この豪雨の影響を少なからず受けたため、最後にその状況を報告してレポートに替えさせていただきます。

10:30 用事で外出。雨がパラパラちらつくも、「いつもの事」と傘は持たず。
13:30 用事が終わり外に出ると本降りになるも「長くは無いだろう」と、北京市郊外にあるIKEA(中国名:宜家)へタクシーで向かう。
14:00 タクシーで北京四環路を北上する途中から豪雨に変わる。途中土地の低い場所も通るため、タクシーの運転手は私を降ろしたそうな雰囲気で、しきりと「这里可以吗?(ここでいいか?)」と聞くが、降ろされては大変なため「不可以。要去店里入口(ダメ、店の入り口まで行って)。」と拒否。
14:15 やっとIKEAに着き、帰りのこと事も考えてタクシーの乗り場を見ると長蛇の列。「雨が止めば…」と思い店内へ。
15:30  まず食事を済ませ、必要なもの=朝食用の「冷凍パンケーキ」を購入。再びタクシー乗り場へ。しかし依然長蛇の列。「長くても1時間待てば乗れるだろう」と思い、列に並ぶ。
    イザという時のために携帯を取り出そうとするが見当たらない。「しまった、昨夜充電して部屋に置いたままだ!」。
ちなみに、ここは郊外型店舗のため、このあたりに地下鉄の駅は無く、またバスも路線がよく分からない。しかもバス停まで行く傘が無い。
この時点で、何があってもタクシーを待たざるを得ないことが判明。腹をくくる。
16:00 列に並ぶが、タクシーがほとんど来ない。10分に一台が20分に一台となり、最後は30分待っても一台も来ないという状態。雨はますますひどくなる。
 いつもなら、白タク(こちらでは黒タクという)もいるのだが、今日はそれすらいない。
列も徐々に乱れ始め、列を抜かす者、列の後ろの方でタクシーをつかまえる者も出始め混乱状態。
交通手段の問題は店とは関係無いのか、また客どうしの問題には関与しないのか、係員は何も言わず、何もせず。
皆口ぐちに「排队!(並べ!)」と叫ぶが効果なし。私も思わず叫んでいた。
20:00 待つこと4時間。あと3人目になったところで、店の係員から「现在八点。以后出租车打不着!(8時です。もうタクシーは来ません。)」と絶望を絵に描いたような天の声。
皆口ぐちに文句は言うが、天気が原因なので、しかたなく散らばり始める。みんなどうするのだろう?そしてさて私はどうするか?
先ず近くの人に「这里的附近有公共汽车站吗?(この辺にバス停はありますか?)」と聞くと、幸いにも歩いて10分ほどのところにあるそうなので、まず店内に入り傘を購入し、バス停に向かう。雨は多少小降りになったが、まだまだ大雨の部類。
20:30 バス停に着く。このバス停を通る路線は、おおよそ6~8つあるが、間違って更に郊外に行くバスに乗れば本当の悲劇が待っている。バス停の路線説明は地図も無く走る場所の駅名だけが書いてあり、またたまに昔のもの等もあって100%信用できない。どれがいいか薄暗いなか調べる。
 偶然、隣の親子が「三元橋」と言っているのを聞いて、見てみると路線番号536に確かにある。「よし、ここまで行けば家に歩いて帰れる。」天に救われたような気持ちで待つこと約20分ようやく536のバスが来て乗り込む。
21:20 三元橋のバス停に到着。雨は小降りに。安堵の気持ちでバスのステップを降りるが、路面はくるぶし上まで水があり、いつもと様子が違う。「道路が無い、川だ!」。道路と思って降りたところは歩道で、車道は下が見えないくらい冠水している。
    しかたなく、歩道脇の生垣の低い塀の上を歩くが、交差点では車道に降りざるを得ない。覚悟を決めて降りると膝上まであった。
 更に、路を車が走ると(走るというよりモーターボートが水の中を進んでいるよう)、大波が来て、恐ろしく不衛生であろう水が腰のあたりまで届く。
21:40  いつもなら、10分でたどり着く道のりが、倍の時間掛ってようやく家にたどり着く。冷凍パンケーキはすっかり解凍されていた。


 教訓 ⇒ 雨の日には、よほど重大な用事が無い限り外出しない。