laoshuaidamiのブログ

2011年2月から2016年5月までの北京生活と辺境を含む中国全土および周辺国への珍旅行の記録です。

2012年5月15日

中国の食糧法について

 3月のレポート「直近の中国農業関連政策情勢」においても述べておりますが、中国においても「食糧法(糧食法)」を制定する動きがあり、先ごろ偶々これを翻訳する機会があったため、若干のコメントとともに訳文全文をご紹介することでレポートに替えさせていただきます。

 本年2月21日国務院法制弁公室(※)は、食糧法の草案(意見募集稿)を公布し、3月末までにネット等を通じての間に広く意見を求めること(パブリックコメント)としました、。
※ 日本の内閣法制局に当たるものと思われるが、日本の場合パブリックコメントは所轄官庁が行うため、この点が異なる。
 
全文は97条で構成されており、章ごとの構成は以下のとおりとなっています。
第1章 総則         全8条
第2章 食糧生産       全10条
第3章 食糧の流通と加工   全13条
 第4章 食糧の消費と節約   全  3条
 第5章 食糧の品質安全性   全  6条
第6章 食糧の調整と備蓄   全19条
第7章 食糧産業の支持と発展 全  8条
 第8章 監督検査       全10条
第9章 法的責任       全17条
第10 章 付則          全 3条

特徴的な点は以下のとおりです。
(1)上記構成からも分かるように、食糧の安全保障がその主な目的であり、食糧の調整と備蓄(第6章)に多くを割いている。
(2)対象範囲を、穀物およびその加工済み製品、豆類、イモ類とし、広範囲に渡る。
(3)輸出入を含む基本的・全般的な方針・計画は国家発展改革委員会が担当し、食糧備蓄・流通に関する分野は国家糧食局等、農業生産に関する分野は農業部が担当する。
(3)生産分野では、
①水害・干ばつ対策を含めた水利・水資源関係
②農業インフラの整備と耕地面積の確保
③遺伝子組換え作物の対する管理の厳格化、
④専業農家の発展と規模拡大
などについて記述されている。
(4)流通・加工分野では、
   ①購買(集荷)、貯蔵(保管)、加工を行う業者に対し許可・届出制度を実施すること
   ②食糧二次加工企業に対し、使用規模を制限することができること
   ③輸出入対し、割当管理を行うこと
などについて記述されている。
(5)消費・品質安全性分野では、節約の必要性が記述されている点が特徴的であるが、安全性に関しては食糧政策の主旨とは若干異なるため、本法での記述は漠然としており、また記述も少ない。
(6)調整・備蓄分野では、
   ①備蓄保管企業の資格制度を含めた備蓄に対する厳格な管理の実施
   ②国家間の輸出入、産地と消費地・省間の調整は中央(国)レベルで実施
   ③緊急時の介入、制限、備蓄の放出
  などについて記述されている。
(7)食糧産業・川下流通分野については、発展に係る支援策については記述されているが、多くは記述されていない。
(7)法にもとづく食糧分野に対する監督管理、法的責任と罰則規定が細かく定められている。


なお、機関横断的なこの草案を実質的にどの部署(国務院国家発展改革員会もしくは党中央)が作成したのか、関係各方面に聞いてみましたが、現段階では不明です。引き続ウォッチしていきたいと考えています。