laoshuaidamiのブログ

2011年2月から2016年5月までの北京生活と辺境を含む中国全土および周辺国への珍旅行の記録です。

2012年9月11日

北京の水事情について

前回に引き続き、水に関するテーマをご案内します。
前回は、排水の関係でしたが、今回は上水の関係です。
以前、こちらに来られた方から、「北京の水道はどうなっているのか? どこから取水しているのか?」、というご質問を受けたことがあります。
正直言ってよく知らなかったため、「北部の周辺ダムから供給されている」とだけ答えてお茶を濁してしまいました(すみません)。
その罪悪感もあって、後々いろいろ調べてみましたが、あまり多くの情報が無いなか、おぼろげながら状況が分かってきましたので、報告申し上げます。

前回のレポートで述べましたとおり、北京は基本的に乾燥地帯であり、北京市で1人当たりが使える水資源の量は、年間100立方メートル、国際的に警戒域とさる1,000立方メートルの10分の1、中国の都市の中でも最低という水準です。
また北京市は、世界でもめずらしい大きな河川のない大都市で、それだけでも水源の少ない都市であると言えます。
ここ十年間ほどで、人口の急増と経済の急速な発展により水需要が増すとともに、2,000年以降、地球温暖化の影響と思われる干ばつがほぼ常態化しているため、水不足は悪化に一途をたどっています。
 
さて、その水資源ですが2009年の公表資料によると、地下水62%、地表水13%、再生水18%、「南水北調」水が7%となっています。
 つまり、水資源の6割強が地下水によるもので、有限に近く、また使い過ぎれば枯渇の可能性の高い地下水にその多くを頼っているという危険な状態にあります。
しかし、現在の状況から、他に選択肢が無いのも実態です。
  
地表水に関しては、北京市の大きな水源施設として、密雲ダム、官庁ダムがありますが、官庁ダムに関しては、水質の汚染により1998年から飲料水用としては使用できなくなっています。
 
このような水不足に対処するため、市政府をあげての節水対策を図っていますが焼石に水の状態で、更に上記の官庁ダムの水質改善を日本のODAなどを使って行っていますが、遅々としてすすまないのが現状です。
 
そこで大きなプロジェクトとして長江から水を引く「南水北調」があります。
中国全体でみれば、南部は水害が頻繁に起きる「水浸しの中国」であるのに対し、北部は干ばつが頻繁に起きる「干上がる中国」となっており、これを解消するために全長千キロを優に超える水路の開発を行っています。
これは、上流、中流、下流のそれぞれから水を引く、東ルート、中央ルート、西ルートの3本のルートからなっています。
このうち東ルートと中央ルートの工事が既に工事が10年ほど前から開始されており、中央ルートの一部は既に北京にまで達していますが、本格的な完成にはまだ数年かかると言われています。
西ルートについては、高地であるためその工事に困難を極めることが予想され、未だ計画すら具体化されていない状況にあります。


以上のように、深刻な水不足に対し、様々手を打ってきていますが、解決にはまだまだ長い時間がかかることが予想されます。


ちなみに、私の住んでいるアパートでは、以下の4種類の水があり、それぞれ別に料金の請求・支払いを行っています。
①自来水:普通の水道水
②熱水 :温水
③中水 :再生水、トイレに使われる。
④飲料水:飲料用でサーバーにタンクを設置して使用。料理にも使う。
最初は、何故こんなに分けなければいけないのかだろう?と不思議に思ったものでしたが、背景にこのような深刻な水不足があったことを改めて認識させられた今日この頃です。

2012年8月8日

北京の大雨について

日本でも報道されていますが、先月21日北京は、市の気象観測記録がある1951 年以降、61年間で最大の豪雨となり、市内で77人(7月末時点)が死亡しました。
 基本的に北京は乾燥地帯で、年間降雨量は400mm程度、東京の約1500㎜に比べると、その3割にも満たない状況です。
雨が降ることはあるにはありますが、長時間降ることは少なく、おおよそ1時間、長くても2時間程度で、少し待つと止むので傘を使用することは年間数日程度しかありません。
しかし、温暖化の影響なのか、今年の夏は例年に比べると雨の日が多く傘が手放せない状況で、また振り返ってみれば今年の冬も雪の日が多かったような気がします。
 
7月21日の豪雨のいつもとの違いは、その時間の長さでした。午前中から小雨がパラつき始め、午後2時過ぎる頃から豪雨に変わりました。そして、その豪雨が多少の強弱はあるものの夜の8時頃まで6時間程度連続で続いています。(北京市は広いので、地域によってその差があるため、私の感じた範囲を述べています。)
北京での豪雨は決して珍しいことではなく、激しい雨と雷、そしてあたりは夜のように真っ暗の状態になります(日本の報道では珍しいことのように書かれていましたが日常茶飯事です)。
しかし、これはあくまでも短時間で、そしてこの短時間の雨にも関わらず、街中いたるところで冠水します。特に道路が立体交差し、一方が低くなってところなどは5分もしない内に確実と言ってよいほど冠水します。
今回の豪雨による死者の多くもこの冠水による溺死でした。つまり、北京は、雨に弱い街、雨に慣れていない都市であるということが言えます。

もともと乾燥地帯であることから、降雨による排水対策にコストと手間ひまを掛けるという発想に立てないことは一定理解できますが、その他にも以下のような要因があるようです。
1.中国は1953~57年にかけ、ロシア(旧ソ連)モデルを導入し、都市建設を行い、下水道建設もロシアモデルをもとに行われたが、そもそもロシアの都市は寒冷地域で雨があまり降らない。
2.歴史の古い都市であることから、過去の排水施設を今現在も一部使用しているが(明代のものあると聞く)、近年の急速な発展により、その上にビル等が建設され、大がかりな改修等が困難。

 なお、このような現状を市政府幹部も十分認識しており、北京市トップの郭金竜共産党委員会書記はテレビの取材に対し、都市部の立体交差など多数の場所で激しい浸水があったことについて「われわれのインフラの脆弱性が表れた」と述べ、大雨に弱い北京の都市構造の問題点を指摘しています。

 なお、7月21日当日、私はたまたま外出し、この豪雨の影響を少なからず受けたため、最後にその状況を報告してレポートに替えさせていただきます。

10:30 用事で外出。雨がパラパラちらつくも、「いつもの事」と傘は持たず。
13:30 用事が終わり外に出ると本降りになるも「長くは無いだろう」と、北京市郊外にあるIKEA(中国名:宜家)へタクシーで向かう。
14:00 タクシーで北京四環路を北上する途中から豪雨に変わる。途中土地の低い場所も通るため、タクシーの運転手は私を降ろしたそうな雰囲気で、しきりと「这里可以吗?(ここでいいか?)」と聞くが、降ろされては大変なため「不可以。要去店里入口(ダメ、店の入り口まで行って)。」と拒否。
14:15 やっとIKEAに着き、帰りのこと事も考えてタクシーの乗り場を見ると長蛇の列。「雨が止めば…」と思い店内へ。
15:30  まず食事を済ませ、必要なもの=朝食用の「冷凍パンケーキ」を購入。再びタクシー乗り場へ。しかし依然長蛇の列。「長くても1時間待てば乗れるだろう」と思い、列に並ぶ。
    イザという時のために携帯を取り出そうとするが見当たらない。「しまった、昨夜充電して部屋に置いたままだ!」。
ちなみに、ここは郊外型店舗のため、このあたりに地下鉄の駅は無く、またバスも路線がよく分からない。しかもバス停まで行く傘が無い。
この時点で、何があってもタクシーを待たざるを得ないことが判明。腹をくくる。
16:00 列に並ぶが、タクシーがほとんど来ない。10分に一台が20分に一台となり、最後は30分待っても一台も来ないという状態。雨はますますひどくなる。
 いつもなら、白タク(こちらでは黒タクという)もいるのだが、今日はそれすらいない。
列も徐々に乱れ始め、列を抜かす者、列の後ろの方でタクシーをつかまえる者も出始め混乱状態。
交通手段の問題は店とは関係無いのか、また客どうしの問題には関与しないのか、係員は何も言わず、何もせず。
皆口ぐちに「排队!(並べ!)」と叫ぶが効果なし。私も思わず叫んでいた。
20:00 待つこと4時間。あと3人目になったところで、店の係員から「现在八点。以后出租车打不着!(8時です。もうタクシーは来ません。)」と絶望を絵に描いたような天の声。
皆口ぐちに文句は言うが、天気が原因なので、しかたなく散らばり始める。みんなどうするのだろう?そしてさて私はどうするか?
先ず近くの人に「这里的附近有公共汽车站吗?(この辺にバス停はありますか?)」と聞くと、幸いにも歩いて10分ほどのところにあるそうなので、まず店内に入り傘を購入し、バス停に向かう。雨は多少小降りになったが、まだまだ大雨の部類。
20:30 バス停に着く。このバス停を通る路線は、おおよそ6~8つあるが、間違って更に郊外に行くバスに乗れば本当の悲劇が待っている。バス停の路線説明は地図も無く走る場所の駅名だけが書いてあり、またたまに昔のもの等もあって100%信用できない。どれがいいか薄暗いなか調べる。
 偶然、隣の親子が「三元橋」と言っているのを聞いて、見てみると路線番号536に確かにある。「よし、ここまで行けば家に歩いて帰れる。」天に救われたような気持ちで待つこと約20分ようやく536のバスが来て乗り込む。
21:20 三元橋のバス停に到着。雨は小降りに。安堵の気持ちでバスのステップを降りるが、路面はくるぶし上まで水があり、いつもと様子が違う。「道路が無い、川だ!」。道路と思って降りたところは歩道で、車道は下が見えないくらい冠水している。
    しかたなく、歩道脇の生垣の低い塀の上を歩くが、交差点では車道に降りざるを得ない。覚悟を決めて降りると膝上まであった。
 更に、路を車が走ると(走るというよりモーターボートが水の中を進んでいるよう)、大波が来て、恐ろしく不衛生であろう水が腰のあたりまで届く。
21:40  いつもなら、10分でたどり着く道のりが、倍の時間掛ってようやく家にたどり着く。冷凍パンケーキはすっかり解凍されていた。


 教訓 ⇒ 雨の日には、よほど重大な用事が無い限り外出しない。

2012年7月9日

中国の地震について

 当地北京に来られ、林立する高層ビル群を見られた方は、元々イメージしていた北京との違いに驚きの声を発せられるとともに、皆さん一様に口にされるのが、「北京には地震が無いのか?」ということです。
 確かに、私がこちらに来て地震による「揺れ」を感じたことは皆無で(私が鈍感なだけかも知れませんが)、偶に日本に一時帰国した折に、(関東地方で)頻繁に揺れることに違和感すら感じるようになっています。(少し前までは、そのことが当たり前に感じていましたが)
 
 しかしながら、中国全体で見ると地震多発国であり、記憶に新しいところでは、2008年5月12日に発生し死者約7万人の被害となった四川大地震、少し古いところでは1976年7月28日に発生し死者約24万人(公式発表、当時は文化大革命の真っ最中であり、非公式には死者60~80万人とも言われている)の被害となった唐山地震(※)があり、その他にも2010年の青海地震(死者約3千人)などがあります。
※ 「唐山大地震-想い続けた32年-」という映画が日本で2011年3月26日から公開予定であったが、「東日本大震災」のため公開延期となり、現在もなお公開されていない。

中国の大部分は、ユーラシアプレートに覆われていますが、東の太平洋プレート(日本の東側で接している)、南東のフィリピン海プレート、南西のインドプレートに囲まれています。
このなかで、インドプレートに接する西南・西部地域での地震、つまり「プレート間地震」が最も多く、四川大地震、青海地震などはこれにあたります。
次に多いのは北京を含む華北地域で、実際、華北平野の北西部に位置する山脈の東側に沿って、華北平原地震帯、燕山-渤海地震帯などの多くの地震帯が存在しています。
この地域はプレート間地震ではなく、「地殻内地震」と言われるプレート内部や表層部で発生する地震で、唐山地震はこれにあたります。
このように、日本と比較すればかなり低い確率ですが、北京でも地震が来ない保証が無いというのが答えです。


このような度々の地震を受け、政府は耐震基準を引き上げる等の対策を行ってきてはいますが、日本と同様、基準強化以前のものはどうしようもないのが現状です。
北京の市街地などでは、古いビルがどんどん取り壊され、新しいビルになっていますが、一歩郊外に出ると古いレンガ造りの建物が以前多く残っています。北京ですらこうなのですから、地方に行けば状況は図り知れます。
また、新しい建築物であっても、本当に厳密にそれが守られているかを確かめる手段もありません。外観は極めて美しく築年数も非常に浅いビルに入ってみると、漏水があったり、壁や床にひびが入っていたいりなどの光景はよく見かけます。
その点、当所のオフィスの入っているビルは、日本の野村不動産と中国企業の合弁会社によるもので、ビルそのものは20年以上経ちますが、そのメンテナンスの良さから、耐震性も信頼に足るものと考えられます。
昨今、当ビルの家賃が急激に跳ね上がり、予算的に非常に厳しい状態になっていますが、命の値段と比較すれば安いものだと思います。


有备无患=備えあれば憂いなし