laoshuaidamiのブログ

2011年2月から2016年5月までの北京生活と辺境を含む中国全土および周辺国への珍旅行の記録です。

2012年1月18日

中国の土地所有について -農村部の土地所有を中心に-

 中国の不動産価格は、政府による取引の制限と景気の陰りから、その程度は鈍化しているとは言うものの、未だに上昇を続けています。
 しかし、皆さまご存知の通り、中国は社会主義国であり土地の所有権は基本的に国家にあることから、不動産とは上物および土地の使用権を指します。つまり、経年により資産価値の下がる上物と期限付きである使用権(※)の値段が上昇していることになります。
※ ただし土地使用権は債権ではなく物権であることから、担保能力を有する。

さてその土地の所有ですが、中国において、土地は「国家所有」と「農民集団所有」の2つに分類されます。つまり、全て国家所有と言う訳ではなく、大まかに分類すると都市部は国家所有地、農村部は集団所有地ということになります。
これは、先の共産主義革命において中国共産党が、「農村における封建的土地制度下での土地問題の徹底解決」を方針として掲げ、これを強く支持する農民により農村を根拠とした革命が展開され成功したことによります。つまり、農民の土地所有が中国共産党のマニュフェストであった訳です。
これによって土地が農民に無償で配分されましたが、その後の人民公社の編成によって、集団化が図られ現在の農民集団所有の形態になっています。
人民公社が解体された現在では、土地所有権は集団に属していますが、その土地の占有、使用、収益の権利を「土地請負経営権」として各農民に与えられており、これは都市部の国有土地の「使用権」とパラレルな関係にあるとも言えます。


 さて、その農民集団所有ですが、以下のような問題があります。
 一つは、集団所有権の主体に対する法律上の規定が無く不明確であり、また場合によっては実質的に主体組織そのものが存在していないケースもあることから、個人の所有権を主張することすらできない場合があること。
二つめは、その所有権、使用権(土地請負経営権)の農用地以外への売却が厳しく制限されていることから(売却する場合には一旦国有地に転換することが必要)、一般的な不動産取引の市場価格に連動していないこと。
つまり、個人(集団)所有の土地であっても、都市部の国有地の使用権以上に不利益な取扱いを受け、都市部のバブルとは、その様相を隔している状態にあります。


確かに、中国の農地の多くが工業化・都市化により転用され、耕作面積の減少が問題視されている昨今ですが、それによって農民が利益を得ている訳では決して無く、それ以外のところに多くの利益が落ちていることになります。
先に取り上げた戸籍問題・社会保障問題と言い、今般の土地問題と言い、中国の社会問題を調べれば、必ずと言っていいほど「三農問題」に突き当たり、その根深さを改めて実感させられます。
政府としても2006年に2,600年間続いてきた農業税(耕地占有税)を廃止するなど、大胆な改革に取り組んでいますが、それ以上に中国および中国を取り巻く経済のスピードが速いということかも知れません。
確かに猛突進する巨体のスピードをそんなに容易く減速させることはできませんから。