laoshuaidamiのブログ

2011年2月から2016年5月までの北京生活と辺境を含む中国全土および周辺国への珍旅行の記録です。

2011年11月10日

人民元について

 現在、アメリカ議会での「人民元切り上げを狙いとした対中制裁法案」が成立するか否かがホットな話題になっています。
 
人民元は、中国においては人民币(レンミンビー/略称RMB)と呼ばれ、その単位は、元、角(1元=10角)、分(1角=10分)の3種類があります。ただし、口語の場合,元は块(クァイ)、角は毛(マオ)と呼ばれます。
 ちなみに、元の最高額紙幣は100元(≒1,200円)ですので、5万円(4千元強)程度を財布に入れると財布がパンパンになってしまいます。
 
さて、切り上げが話題となっているその人民元のレートですが、11月9日の上海外国為替市場の人民元相場の終値は、対ドルで6.3402元、対円(100円)で8.1721元で引けていますが、これはどのように決まるのでしょうか?
改革開放後の歴史的な経過から振り返ってみます。

1.1980~1996年
(1)政府による厳格な外貨管理が行われた時期から改革期へ。
(2)1994の外国為替市場が設立された時点で基本的には変動相場制に移行。しかし、政府による市場介入でレートを操作。
<主なトピック>
○外貨兌換券の発行(~1995年)(兌換券は今では使えませんが、古銭商では高値で取引されているようです。)
○公式レート(対外非貿易取引レート)と内部決済レート(対外貿易レート)の二重相場制(~1985年)
  ○外国為替市場の創設(1994年)
  ○IMF8条国への移行(1996年)
2.1997年~2005年
  1997年に発生したアジア通貨危機により、ドルペック制(事実上の固定相場)に移行。
  1米ドル=8.28人民元。
  ドルペック制= 対米ドル固定相場、他の通貨とのレートは米ドルの値動きに連動。
3.2005~2008年
  2005年7月に人民元の2%切り上げ⇒1米ドル=8.11人民元。
通貨バスケットを参考に調整する管理フロート(管理変動相場制)への移行。毎日の変動幅を対米ドルで前日の終値(基準レート)から上下0.3%に制限。
  通貨バスケット制= 複数の通貨をウェイト付けして合成した通貨バスケットに対して
自国通貨を固定
  2007年5月に変動幅の制限を上下0.5%に拡大。
  2008年4月には1米ドルが6人民元台に突入。
4.2008~2010年
  リーマンショックによる景気の悪化を懸念した当局は、再度ドルペック制に復帰。
5.2010~
 2010年6月、「人民元の弾力性を高める」との声明を発表し、ドルペック制を廃止し、通貨バスケットを参考とした管理変動相場制へ再び移行。
 以降も元高が続き、現在の相場に至る。


 多少長くなりましたが、現在のレートの決まり方を整理すると以下のようになります。
① 名目上は変動相場制
② ただし、その変動は、中央銀行である中国人民銀行が通貨バスケットを参考にしながら介入・管理し、かつ一日0.5%の制限幅の範囲に抑えられる。
③ 多通貨バスケット制の内容は明らかになっていないが、基本的に米ドルが基軸となっていると推測。
⇒ その証拠に、円が対米ドル対し円高となった際には、必ず人民元に対し円高となっています。しかし、人民元も米ドルに対し元高となっているため、円は対米ドルほど人民元に対し円高になっていないのが実態です。


  以上のように、近年、円高に疲弊している日本と違い、その時々の経済情勢に応じ、かなりドラスチックに通貨・為替政策を打ってきています。
 もっとも円は今や国際通貨であることから、なかなか不透明な政策を打てないことも事実ですが…。
しかし中国も、アメリカに対する配慮等もあり基本的には元高トレンドにあって、ここ5年間の間でも、対米ドルで2割以上の元高となっています。
アメリカが納得する水準がどの程度なのかは分かりませんが、1米ドル=4元程度までは行くだろうと見る専門家もいます。