laoshuaidamiのブログ

2011年2月から2016年5月までの北京生活と辺境を含む中国全土および周辺国への珍旅行の記録です。

2011年10月14日

中国の流動人口について


先日、以下のような新聞記事がありました。
就業流動人口、2億2100万人=毎年1000万人増加-中国
 中国国家人口計生委員会は9日、2011年中国流動人口発展報告を公表し、農村の出稼ぎ労働者(農民工)など就業流動人口が2億2100万人と、全人口の16.5%に達したことを明らかにした。過去3年間は毎年1000万人前後のペースで増加。今後30年間で3億人の農村戸籍人口が都市に流入するという。国営新華社通信などが伝えた。
 それによると、1980年以降に生まれた農民工のうち、76%が都市部での永住を希望しているが、生活費の高騰や社会保障サービスの不足などに直面している。
 農民工の月間所得は4.5%が500元(約6000円)以下、27%は1000元以下にとどまり、20%前後は都市部で生活を続けていく余裕がないほか、52%は社会保険制度に一切加入していない状況だという。


 2010年の国勢調査(10年に一度行われる)の結果によると、中国の総人口は13億4千万人、内都市人口は6億6千万人、残り6億8千万人が農村人口とのことです。
今回の国勢調査は居住地を基本に行っており、そのなかで戸籍登録地を離れて半年以上が経過する人口が2億6千万人いるとされています(上記の2億1千万との差5千万人の差は不明、非就業人口と推測される。)このため、農村人口の3割弱(2億6千万÷《6億8千万+2億6千万》≒28%)が、農村に戸籍を持ちながら都市へ流入していることになっている訳です。
 ここで問題になるのが、中国の戸籍制度です。
 中国の戸籍制度は、1958年に制定された「中華人民共和国戸籍登記条例」に依るもので、その後修正等はされているものの現在もなお有効となっています。大きな特徴としては、「農村戸籍」と「非農村戸籍(都市戸籍)」に二分され、戸籍の移動は原則的に認められていない点です(日本の住民票のようなものは存在しません)。
 このことにより、農村から都市に出て働く労働者(その多くが農民工=出稼ぎ労働者)は、都市において都市戸籍所有者と同等の行政サービスを受けることができません。つまり、病気になっても社会保険が使えない、都市に出て働いている者の子女が学齢期に達しても現地の通常の学校への入学ができない、等の問題が発生します。
 これら問題は、1978年の改革・開放後、経済発展にともなう農村から都市への流入者の増大(1980~90年代「盲流」と呼ばれた)により深刻さを増し、現在中央政府はこの改革に乗り出しています。
 現在北京市の常住人口は約2千万人、このうち地方からの流入者は7百万人強いると言われています。つまり、北京市の3人に1人が北京市にいながら、十分な行政サービスが得られず不安定な生活を強いられている状況にあるということです。
 しかしながら、この問題は一朝一夕に解決できる問題ではありません。
 既に都市機能はこれら流入者無しでは、存在しえなくなっているのが現状ですが、これを緩和すれば、急激な人口流入・増大により、都市機能が麻痺することが十分想定されます。かつて、河南省の省都鄭州で都市戸籍制度を全廃したため大混乱が生じ、わずか1年で全廃措置を停止したという例もあります。
 確かに、中国の大都市の治安が他国の同規模の都市と比べて格段によいのは、これら移動制限措置により、低所得者層が多く住むいわゆるスラム街が無いことがその原因の一つとも言われています。
 基本的に移動の制限があること事態は大きな問題で、それに対する内外からの強い批判があることは政府も十分承知していますが、それを止めた時に発生する問題も十分想定・検討しながら事をすすめていくことの重要性も一定認識する必要があるということです。
 この舵取りは非常に難しく、時間をかけ試行錯誤しながら段階的にすすめていくことになるでしょう。
 说起来容易,做起来难!