laoshuaidamiのブログ

2011年2月から2016年5月までの北京生活と辺境を含む中国全土および周辺国への珍旅行の記録です。

2012年4月12日

中国の電力事情について

 北京は今週から急激に気温が上がり、日によっては昼間は25度近くにまでなります。
 2週間くらい前に最低気温がようやく氷点下を上回ったと思ったのですが、春をとおり越して一気に初夏に突入しつつある陽気です。
 気温が上がり夏に向かうと気になるのが電力不足の問題です。
日本では地震による福島第1原発の事故を受け、各原発が定期点検・運転停止していることにより電力不足が生じていますが、中国の場合は構造的な要因により、近年電力不足が叫ばれています。
基本的には、経済発展にともなう電力の総体的な受給のアンバランスが原因ですが、その他にも要因はあります。
そこで、中国の発電情勢とともに電力事情をご説明します。

中国の電力会社は、2002年にそれまで国内全ての発電、送電資産を1社で所有していた国家電力公司が分割され、以下のような発電事業者5社、送電事業者6社になっています。
<発電事業者>:中国可能集団公司、中国大唐集団公司、中国華電集団公司、
中国国電集団公司、中国電力投資集団公司
<送電事業者>:東北電網有限公司、華北電網有限公司、華董電網有限公司、
華中電網有限公司、西北電網有限公司、南方電網有限公司
 このように、発電事業者と送電事業者とが分かれている点が特徴的であると言えますが、発電5社の地域性は無く、送電事業者は地域によって分けられています。
 送電事業者が地域によって分かれているため、それぞれ補完し合うこと(特に南北間の補完が必要であることから「南北互供」と言われています)が必要ですが、現在それが必ずしもうまく機能していない状況にあります。

 次に発電設備ですが、火力発電が7~8割、水力発電が約2割、原子力を含むその他発電が数パーセントというような構成となっています。
 このなかで、特徴的なのが、火力発電のほぼ全量が石炭発電であり、火力発電に締める石油の割合が極めて少ない点です。
 何故石炭が多いのかというと、中国には石炭が豊富にあり、エネルギーの国内調達を前提として発電所を建設してきたことにあります。
 しかしながら、石炭を産出するのは主に内陸部にあり、電力を消費するのは主に沿岸部にあるため、石炭を長距離で輸送することが必要になってきますが、この輸送力が大きな壁となっています。
このため、石炭産地に近い内陸部で発電し送電線で輸送する「西電東送」事業が現在すすめられていますが、未だ途上にあります。
 
 加えて、近年石炭の需給がひっ迫し、石炭価格が上昇していますが、電力料金は国が定めているため、原料の高騰を電力価格に転嫁することができず、電力会社は苦しい経営を迫られています。
 このため、一部では電力会社が損失を拡大させないために操業を落としているとも言われています。


 このように、
①需給の地域間のアンバラランスに対し、対応できていないこと。
②一部のエネルギーに極端に依存していること。
③規制緩和による効果がうまく機能していなこと。
なども、電力不足の大きな原因となっているようです。


最後に皆様のご関心の高いであろう原発ですが、現在以下のような状況にあります。
稼働中 14基(うち1基は、本年4月稼働)
建設中 30基
計画中  4基
なお、これらは全て沿岸部に位置しています。